「減災対策は保護者と共に」



以下文面は「SAFETY LIFE TOKYO」(公益社団法人 東京防災救急協会) 2017年4月号に掲載されました。


◇ はじめに

 エンゼル保育園では0歳児から就学前までのお子さんをお預かりしています。定員は100名です。保育園は何時いかなる時も、保護者からお預かりした園児の命を無事に保護者にお返ししなくてはなりません。保育中の重大事故を発生させてはならず、不審者から園児の命を守ります。そして、災害が発生したその時、保育園は園児の命を守り抜くのです。つまり保育園とは、保護者から幼い命を預かり、その命を豊かに育む施設です。こうした保育園の使命を全うするために、当園は二つの災害対策標語を掲げています。

1、災害対策は二者共に
(二者とは保護者と保育園です)

2、まさかの時に幼い子どもの命を守るのは私です
(これは職員一人ひとりの標語です)


◇ 減災対策

(1) 月次訓練
月次避難訓練
月次避難訓練
初期消火訓練
初期消火訓練
 「消防計画」に基づき月次訓練を実施します。“訓練火事です・訓練火事です。お友達は先生の所に集まりましょう”から始まる火災発生を想定した訓練では、初期消火訓練・通報訓練・園児避難訓練を実施します。“地震発生”では、園児は防災頭巾をかぶり避難靴を履いて第一避難場所(園庭)に避難します。6月、保護者と共に引き取り訓練を実施。10月、首都直下地震発生を想定し、全園児最終避難場所である都立光が丘公園まで避難します。0歳児はおんぶ、1歳児は避難車。5歳児が2歳児の手を引き、4歳児が3歳児の手を引いて、黙々と歩き続けます。子どもの力が漲る訓練です。



(2) 応急手当講習会
応急手当講習会
救命学習会(応急手当奨励事務局)
 園内にAEDを設置しています。毎年光が丘消防署と東京防災救急協会の協力を得て、応急手当講習会を実施しています。保護者も参加します。管理者層は普及員、保育士は上級救命、保育助手並びに給食スタッフは普通救命資格を有しています。
 まさかの時に幼い子どもの命を消してはなりません。保護者と共に全職員で緊急時に備えます。この気構えが、幼き子らの命を豊かに育む原動力となっています。



(3) 日常の備え
防災グッズ
非常時持ち出しリュック
 減災対策は日常の備えを強化することから始まります。園舎の耐震強度は非常に強固です。(IS=0.87~2.03、CT・SD=0.91~2.14)。窓ガラスには飛散防止フィルムを貼り、保育室と内側廊下のガラスはアクリル板に入れ替えてあります。天井からの落下物防止工事・ロッカー等移動防止のための耐震工事に落ち度があってはなりません。園内各所に自動点滅式EEスイッチ付き蛍光灯を設置し、大地震発生時の停電対策を講じています。各クラスには在籍クラスの園児の内容に合わせた「非常時持ち出しリュック」を設置。大地震発生時には、職員はリュックサック、園児引き渡し名簿、救急バッグを持って園児を安全な場所に避難させます。
 日常の備えその2は“減災教育”です。卒園を前にした園児は「池袋防災館」を訪ね、自分で自分の身を守るための学習体験に参加します。保護者と職員も池袋防災館の体験学習に出向きます。



(4) 被災地から学ぶ
地域公開講座 女川町からのメッセ―ジ
地域公開講座
 平成7年1月17日「阪神・淡路大震災」発生。翌年、当園職員一同は3班に分かれて被災地神戸を訪ねました。火災で焼き尽くされてしまった大地の跡に自分の足で立ち、仮設住宅を訪問して被災された人々の声を聴きました。「1・17神戸」の研修で得た力とは“まさかの時に幼い子どもの命を守るのは私です”という減災標語でした。その年、神戸から黒田裕子氏を招き、光が丘区民センターで「被災地神戸からのメッセージ」と題した地域公開講座を開催。「1・17神戸」発生後の10年間、職員は神戸を訪ね続けました。平成23年3月11日「東日本大震災」発生。職員は宮城県女川町を訪ねました。被災の地に立ち、“命の尊さ限りなき”を心の奥深くに刻みました。女川町から女川町教育委員長(当時)においでいただき、東日本大震災の惨状を保護者や地域の皆さんに伝えていただきました。



(5) 減災対策は二者共に
炊き出し訓練
炊き出し訓練
 保護者と地域の皆様の協力を得て開催するチャリティバザー。保護者と合同で炊き出し訓練を実施します。チャリティバザーの収益金は神戸と女川町に届けています。災害発生!保護者と保育園は予め確認し合っている災害発生時の心覚えによって協力し合います。
 『災害発生、全職員は園児の安全を確保します。保護者には、まずはご自分の身の安全を確保し、お怪我なくお子さんをお迎えに来てください。互いの無事を念じ合いながら、災時を切り抜けましょう』(「エンゼル保育園災害発生時避難予定場所確認カード」より)



おわりに
以上が当園の減災対策の心根と日常の対策行動です。お預かりしている園児の命を守り切ることに加え、災害発生時に地域の避難拠点としての役割を引き受けるため、①100m井戸を掘削し、②災害時用自家発電機、③マンホールトイレ・災害用大型倉庫を設置しました。  災害発生!地域の幼き子らの命を繋ぐのは、私共社会福祉法人の任務です。

みんなの井戸
まさかの災害時に備えて


防災倉庫
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みんなの井戸
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